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thinking + sinking

とりとめのない思考、または試行のアーカイブ。

道化まとめ|影の現象学②

河合隼雄『影の現象学』より、「影の逆説」まとめのつづき。
nattama.hatenablog.com

トリックスター

道化的存在として、各地の神話・伝説に登場するトリックスターが取り上げられている。とりわけ紙幅を割いているのは、ウィネバゴ・インディアンの酋長の掟破りの振る舞いや、日本の吉四六さんの話など。トリックスターは変幻自在で、自在性、両義性を特徴とする。また、先のまとめでも触れたように、中心と周辺をつなぐ役割を果たす。このとき、王が利用されるというのも典型的な主題らしい。

また、トリックスターは「隣人の悪」について知ることが多い。こうした偶然の出来事について、同書では「共時性」として説明している。

共時性(synchronicity)とはユングが因果性に対して、自然現象や心の現象の間に意味のある偶然の一致が生じることに注目し、それを説明するために提唱した概念である。

共時性と因果性、こうした時の概念は興味深い。そういえば、山口昌男氏の道化についての本を探していたら、たまたま同じ岩波現代文庫で、『時間の比較社会学』というのがあった。今度読んでみたい。ともあれ、トリックスター共時性と親和的だということだ。

トリックスターはあまりにも無意識に近い生き方をしているので、無意識のアレンジメントとしての共時的現象に巻き込まれることが多い

こうしたトリックスターの自由な動きを可能にする場として、中世カーニバルの祝祭空間が挙げられる。ここで上記の山口昌男氏の分析が紹介されている。氏の著書『道化の民俗学』を探しているのだけれど、なかなか手に取れるところにない。うーん、アマゾンで買うしかないか……。

中世の市場=開かれた世界であり、そこでは人々の自由な接触が可能となり、誰もが対等で、人や物が常に移動する流動性が存在したのだという。こうした祝祭空間の特性が現代のセラピールームと似ていると著者の話は続くわけだが、注目したいのは、この「開かれた世界」「自由」「対等」「流動性」という一連の語句である。

この辺りの話は、伽藍を出てバザールを目指せと説いた『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』の貨幣空間とか、『境界の現象学』につながるような。特に、定住ではない「流体」の存在論を詳述した後者については、ヘルメス=メルクリウスのことも出ていたし、また後ほど読み返した方がいいかも。

■ ストレンジャー

そして、ようやく最後、ストレンジャー。これは字義通り、見知らぬ人であり、日常の中に非日常性をもたらすものの一つだという。物語の冒頭でよくあるよね、「ある村に、あるいはある町に『見知らぬ人』が登場する」というシーン。

彼はそこに出現したというだけで、その場の日常性を破壊する。彼はその世界の人々になんらかの意味で変な感じ(ストレンジネス)を感じさせずにはおかない。

何か言い方ひどっ。要は、空気読めねえなこいつ、というか、空気壊してるよ、という感じ? まあでも、無条件に受けれ入れてくれる場所など、この世のどこにも存在しない。

ストレンジャーの説明では、マーク・トゥエイン『不思議な少年』が取り上げられる。サタン君が出てくるやつね。積ん読本の一つだな……。この辺り、深追いするなら読んでみても……、また検討するとして、ストレンジャーについてはこの辺で切り上げ。

その他、影の破壊力を示す例として、強制収容所の体験を書いたヴィーゼルの『夜』が紹介されていた。フランクルと併せて読んでみたいところではある。