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thinking + sinking

とりとめのない思考、または試行のアーカイブ。

ヘルメス

ヘルメス、またはヘルメース。
ギリシア神話に登場する青年神であり、ローマ神話ではメルクリウスといわれる。

オリュンポス十二神の一人。神々の伝令使、とりわけゼウスの使いであり、旅人、商人などの守護神である[1]。能弁、境界、体育技能、発明、策略、夢と眠りの神、死出の旅路の案内者などとも言われ、多面的な性格を持つ神である。

ヘルメース - Wikipedia

wikiにはさらにいろいろ書かれているけれど、おさえておきたい特徴は以下。

nattama.hatenablog.com
トリックスターということで、さらにギリシア神話関連の書籍を読んでみた。
以下は、新潮文庫『ギリシア神話・上』からのまとめ。

■ ずる賢い悪童ならぬ悪赤ん坊

ヘルメスは、生まれて間もない赤ん坊ながら、早速、異母兄アポロンの牛を50頭ほど盗みに行く。その肉を食べ、さらに牛の腸を弦として竪琴まで作る。アポロンに見つかり、問い詰められるも犯行を図太く否認。アポロンアポロンで、ヘルメスのかき鳴らす竪琴が欲しくなり、牛はいいからと言い出す始末。後日、ヘルメスの吹く葦笛をまたもアポロンが欲しがり、牛追いの杖との交換を持ちかけるも、ヘルメスからは占術までねだられる。完全になめられてるよね、アポロン……。ちなみに、この杖が人を自由に眠らせるヘルメスの黄金杖だそうだ。

なお、ヘルメス像の原初形態は、路傍や畑の境などに立てられた陽物を持つ像だとか。いわく、「ごく低い農民層や牧者の間から、豊饒や家畜の多産を祝う神霊として起った」ものらしく、多く路傍に立っていたことから、伝令使、道案内者としての性格を発展させたという。その関連かは定かでないが、ヘルメスは知的職業に携わる役どころながら、親しみやすい庶民的性格を持つ。

同書以外にもギリシア神話の本をあさってみたけれど、ヘルメスがメインの話はあんまりない。メドゥサ殺しのペルセウスに助力したり、とかはあったけど、やっぱり端役。まあ、メッセンジャー、使いっぱだからね、多分。その中でも活躍するのがアルゴス殺しの話。まあ、それでもゼウスの使いっぱだけど。

アルゴス殺し

アルゴスは怪力の巨人にして、全身に眼を持つ「百眼の怪物」。その姿から、すべてを見るもの=パノプテースの異名を持つ。パノプテースってあれだよね、フーコーが注目したパノプティコンに似てるけれど、語源はここから来てるのかな? そうすると、すべてを見るもの=神または王を打倒するというのが、ヘルメスの立ち位置?

王を出し抜く愚者という連想はさておき、ヘルメスがなんでアルゴスを殺すことになったかというと、発端はゼウスの浮気と妻ヘラの嫉妬。このとき、ゼウスがイオという娘に入れ込んでいたのだけれど、それを知って怒ったヘラがイオを牝牛に変えて、さらにアルゴスに監視させる。それで、イオを連れ出したいゼウスがヘルメスに何とかしろと命令、ヘルメスの登場となる。

でも、ここのくだり、オウィディウス『変身物語・上』では違った。ヘラがゼウスに嫉妬してというのは同じだけれど、イオを牝牛に変えたのはゼウスで、ヘラから隠すため。そんでそれを見抜いたヘラが「この牛をわたしにください」と要求する。ゼウスにとっては、拒めば疑惑を招き、応えれば愛人を引き渡すことに。すごいねこれ、まさに詰めの一手。逃げ場を失い、ゼウスは牝牛に変えたイオを引き渡す。それでも心配なヘラはアルゴスに見張りを命じる。イオはというと、姿は牛でも意識はそのままで、牛として飲み食いすることに苦悶する。そして、そんなイオを見かねたゼウスがヘルメスに命令を下す、という流れ。

『変身物語』所収の方が物語として完成度が高くて面白い。これに限らず、神話はいくつかバージョンがある。アルゴス殺しに関しては、ブルフィンチも『変身物語』と同じ筋だった。いずれにしても、ヘルメスは使いっぱなんだけれど。

その後のアルゴスを殺害するところはどれも同じ。杖の力を持ってしてもなかなか眠らないアルゴスに、杖の由来などをおしゃべりしながら、ようやく百の眼が閉じたところで、持っていた鎌で首をずぶり。まだ少し話は続くけれど、ヘルメスの出番はここまで。

■ その他

ヘルメスは旅人を守護する神だが、人間を黄泉に導く死出の旅路の先導者、亡魂の案内者でもあるそうだ。そのほか、牧神パーン、牧童ダプニスの父といわれるが、由来ははっきりしない。